一般にコンゴ人の「外国人」への感情は、複雑である。ヨーロッパ(フランス)の植民地であった時代をふくめて、常に外国が良くも悪くも自国の存亡に関わってきた歴史がある。主要な収入源である石油産業を始め、おもな産業や政治・経済が外国政府や企業なしに成り立たない事情になっている。
観光産業もほとんどないので実際に外国人を目にすることはあまりない国ながら、外国との関係なしには成り立たないことを国民は知っている。 私たちが滞在中に、「La Fete de Brazza =ブラザ祭り」というのが首都ブラザヴィルで大々的に行なわれた。「東京祭り」や「大江戸祭り」みたいなもんか、と思っていたらこれが根本的に違っていた。 ブラザとは、コンゴを「発見」した探検家ピエール・サヴォナン・ドゥ・ブラザ(Pierre Savorgnan de Brazza, 1852-1905?)というイタリア人のことである。首都ブラザ・ヴィルは、フランスが赤道地域(現在のコンゴ、ガボン、中央アフリカ共和国、チャド)に植民地政府を置いたときに首都として、彼にちなんでつけられた名である(ヴィルVilleはフランス語で「市、町」)。そのいわばガイジン来訪100年祭が、現在のコンゴ政府をあげて大々的に行なわれたわけである。 写真をみてのとおりだが、「祝!ブラザ!」というポスターにコンゴの現大統領とフランスのシラク大統領が、アラビアのローレンスみたいなブラザと、当時のコンゴ人の象徴とおもわれる人とともに、手を取り合っている写真が載っている。このお祭りのために、ホワイトハウス再現?ともみまごう荘厳なる建物が市街に建てられ、ブラザ氏の銅像が建てられ、夜はカラフルなレーザー光線がぐるぐるとそのまわりを照らし、そして大音量のリンガラ・ミュージックが巨大スピーカーから響いている。そのまわりを軍人だか警官だかが、厳重にガードしている。 普通に考えても、コンゴ国民としては、これを企画し巨額を投じた政府が情けなくて怒りにふるえる、という状況ではないか、と思うが、見たところ、街中にはブラザ祭りのポスターが貼られ、「そういえば、明日この祭りがあるよ」と人々に熱意はないにしろ、反感もあまりない様子。国民は政府の暴挙には慣れているのか、へえーきれいな建物作ろうとおもえばできるのねえ、とライトアップされたホワイトハウスに、純粋な興味の目を向ける。 言っておくが(と肩をふるわせてしまうが)、住宅地では頻繁に停電があり、断水があり、道路も舗装されず、路肩の溝は工事しないでほったらかしという状態なのに、ブラザ祭りでレーザービームである。 J夫の友人たちと、ブラザ祭りについて話す機会があった。彼らは言う。「まったく同感だよ。それがほとんどの庶民が、というのはほとんどの国民だけど、思ってることだよ。先に電気と水だよ!」 「でも、この10年くらいで、ずいぶん変わってしまった。前は、町なかで人が会えば、口に泡飛ばして政治論議をしていたものだけど、最近はもうなくなった。(1997年から99年頃まで続いた、大統領選に端を発する)内戦があってから、もう政治の話をするのもうんざりだ」 ここの人々は、独立後、何十年も希望と挫折の道をたどり、政府と外国と石油、資源にまつわる争いに巻き込まれてきた。 そして、「皮肉だけど、1960年代、僕たちの子どもの頃、つまり植民地から独立したばかりのころは、ほんとに綺麗な町並みと建物が並んでいたんだよ。ブラザヴィルは、中央アフリカの中では一番美しい街だったんだから。」ブラザヴィルの市街には、もと噴水があった広場、とか、もと街路樹があった通り、とか、その面影がかんじられる場所がある。 コンゴには森も川も海もある。肥料をやらずとも作物が育つほどの肥沃な土地にも恵まれている。ブラザヴィルの町の中にも、あそこにマンゴ、あそこにバナナ、と楽園のごとく果物の実がなっている。しかし、なぜか売っているマンゴ・ジュースは、ドバイからの輸入品だったりする。 ブラザヴィルには、コンゴ河という、対岸のキンシャサが遠くて見えないほどの巨大な水量を持つ川が流れている。しかし、住民の住宅の水道は、しょっちゅう断水する。人々は、いくつものバケツやたらいに水を貯めて断水に備える。飲料水はペットボトルの水を買う。 北部への旅行中にOyuという都市を通過した。ここは、現大統領のホームタウンだ。見た目には、ほかの町ととくに変わりない、のどかな町に見えたが、念のため、カメラを向けるのはやめよう、とJ夫とイトワさんに言われた。町の中に突然現われたのは、飲料水ペットボトルの大工場だった。私には、ブラザ記念館とレーザービームを見たときの苦―い不快感が、再び襲ってきたのだった。
by tytomoyo
| 2007-04-09 18:45
| ブラザ祭り
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コンゴってどこ?
アフリカには、コンゴ共和国(首都ブラザヴィル)とコンゴ民主共和国(首都キンシャサ)の2つのコンゴがあります。
私達が訪れた国-J(夫)の出身国-はコンゴ・ブラザビル、人口3百万あまりの小国です。ちなみに隣国のキンシャサ・コンゴはもとのザイールという国で、地図でいうと右隣の巨大な面積の国です。 主な現地語はリンガラ語、共通語はフランス語です。 カテゴリ
全体 コンゴ到着 ムンデレかシノワーズか 写真はノン マルシェ(市場) マルシェ(市場)2 アフリカの太鼓 アフリカの太鼓2 カフェ、レストラン ファッション、ヘアスタイル ブラザ祭り リンガラ・ミュージック 大人はエライ 小旅行 1. 小旅行 2. 小旅行 3. 食 びっくりする風習 絵画スクール ゴスペル(賛美歌)のある日常 入国ビザ(パリにて) ブラザヴィル事情・旅の持ち物 アフリカ文学(番外編) 2008年準備編 サップ主義 2008年夏 ランクル チャリティ物品を送る コンゴ航空に乗る ランクル道中 ポイントノワールの海辺で コンゴの国立公園 その後 検索
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