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太鼓スクール 製作編

太鼓の学校を訪ねた。
ここではコンゴの「Ngoma ンゴマ」と呼ばれる太鼓を製作し、演奏を教えている。
アフリカの太鼓は「Tamtam タムタム」とか「Djembeジェンベ」とか呼ばれるが、地域によって名前も形も違う。コンゴの「ンゴマ」は、すらっと背の高い細身の太鼓だ。 (コンゴでもタムタムとも呼ばれます。ジェンベというのはセネガル、マリなど西アフリカでの呼び名だそうです)

「いまちょうど一本(一台というのか)太鼓を仕上げるところだ、」と、太鼓の教師でもあるTさんが、重そうなバケツを手にして校舎らしき建物から出てきた。

バケツには黒っぽい物体が水一杯に浸してあって、ハエがすごい勢いでたかっている。と思ったら、その黒い物体は「鹿」の皮とのこと。バケツから水のしたたる鹿の毛皮を引き揚げ、広げると、ハエの大群も一緒に大移動する。
何日か水に浸してあった鹿の毛皮を、太鼓に張る作業だった。
丸太のようなシンプルな形の「ンゴマ」を立てて、上に鹿の皮をかぶせ、Tさんはかみそりの刃のようなとてもよく切れる刃で、シャッシャッと毛皮の堅そうな毛を剃ってゆく。

「太鼓のボディは木でできている。かぶせた皮は動物の皮だ。太鼓全体で、森を表しているわけだ」と言いながら、毛皮の毛を剃っていく。かみそりの下からは、意外にきれいなアイボリー色のスキンが現われてくる。ハエの大群は、剃り落とされた毛のほうに移動して、皮の表面はみるみる生まれ変わる。一枚のうすい皮となったものを太鼓の上から覆い、太鼓の側面に一本、釘を打ちこむ。そこから対角線上の端を寄せて、ひもで縛った重石をつけると、皮はしなやかに張って、いかにも弾力のある太鼓の面にみえてくる。
そこからの作業は、男たちが3、4人かかって、「せーのっ」に似た掛け声で太鼓の周囲に皮を引っ張り、太鼓の面をピンと張らせる。

「明日は、女性の太鼓レッスンがあるから見にきたほうがいい」とTさんが言う。
女性の、というところを何度も強調して、どう、意外でしょ?というような口ぶりだ。あそこにいる女性達も叩くんだよ、と家の外でバーベキューしている(といってもそこが日常の調理場のようだが)、数人を指さす。見ると、20代くらいから60代くらいまでの女性たちがいて、子供をあやしている女性もいる。普通の大家族のようにしか見えない。

翌日、太鼓のレッスンを見にいってその意味がわかったのだが、アフリカの太鼓を女性が演奏するのは極めてめずらしい。それも大グループで太鼓オーケストラである。Tさんは、ちょっと前まで女性は太鼓を演奏しちゃいけなかったんだ、とこのコンゴの伝統楽器について教えてくれた。「女性が太鼓にさわったら穢れるとか、良いものは女性に触らせない、とかそういうものはほかにもあるんだが。女性が米を食べると目が飛び出る、とか。いまでは時代は変わって何でも平等だからね、ははは。」 

「それって、日本もありますよ。相撲は女性はダメだし。秋茄子は嫁に食べさすなっていうし。」
Tさんは、日本の相撲は知らないようだったが、ナスは食べたらダメ、というのには、真底から同情してくれているようだった。

太鼓の皮を張って、釘で打ち付け終わると、余分な皮の端を切り取ってヤスリをかける。ほかの太鼓も出してきて、表面を中心に向けて円形に並べると、焚き火をして太鼓のチューンアップを始める。

釘を打つ頃から、職人が3、4人増えたが、中には「こいつは、プロのミュージシャンだ。パパ・ウェンバのバンドで太鼓やってるんだ」という人もいた。「え、あのパパ・ウェンバの?」ほんと?という反応には慣れているのか、すぐそこにCDを持っていて、バンドの一員として自分の写真と名前が載っているのを「ほら、」と見せてくれた。

そして、チューンアップした太鼓をならべると、Tさん、パパ・ウェンバのドラマー、その他3人で、夕焼けのかなたまで届くような伸びる音で、作りたての太鼓の音を披露してくれたのだった。

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by tytomoyo | 2007-03-27 17:52 | アフリカの太鼓


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